御宮参り・御幣懸り

「御宮参り」は、獅子行列が社殿をまわりながら参拝します。これにつづく「御幣懸り」は、初め女獅子が庭場に何か光る物が落ちていているのを見つけ、怪しみ恐れます。大太夫が近寄って、それが金色の御幣であることを確認してから、3匹は次第に複雑に絡み合い、最後に大太夫が悪魔退散の祈願をする、という内容です。女獅子をリード役として3匹が織りなす構成美は、数ある三匹獅子舞の中に比類のものがなく、その極致を示す舞となっています。

  • 御宮参り
    最初に関係者全員が社務所に集まります。獅子、ササラ、太刀遣い、猿田彦(テング)が前に並び、宮司による出発の儀式が執り行われます。

    御宮参りの道行きでは、華やかな万灯を先頭に、竹の杖・ソデガラミ2・樫の杖を持つ露払い・悪魔払い(氏子や保存会員の役員)3、笛方、波の花(塩)、洗米、御神酒、猿田彦命、秘伝書(保存会長)、御幣、太刀遣い、ササラ(2名)、獅子(大太夫、女獅子、小太夫)、ササラ(2名)からなる獅子行列に、氏子や一般見学者が続いて社殿に向います。行列は社殿の周囲を3回まわりながら参拝します。見物にこられた方も、ぜひ後についてお参りください。

    拝殿前に並ぶたびに、猿太彦命が獅子行列を祓い清めます。1回目は渡り拍子、2回目は揃い、3回目はこの芝の出端「トーヒャニヒャニヒャニ」が始まります。ここから獅子が舞い始め、舞いながら拝殿を巡り、庭場におりてきます。1度庭場の下手(鳥居側)まで戻り、獅子は横1列に、ササラはそれを四方から囲むような定位置に並びます。ここから「御幣懸り」に移行します。
  • 御幣懸り
    3匹の獅子が御幣に懸る舞です。御幣は、大きな小麦のわらづとに多くの金の御幣を差したきらびやかなものです。平成17年(2005)頃まで、例大祭の後にこの御幣は諏訪神社のお札とともに祭礼関係者の家に配られました。

    出端を3笛繰り返すうちに獅子とササラは庭場の中央に進み出て、すぐにチラシとなります。先導役として最初に御幣に懸る女獅子と、それに返し笛(節の後半部分の繰り返し)でうなづくように呼応する小太夫・大太夫の動きに始まる冒頭場面は、見る者に静寂な感動を呼び起こします。女獅子が誘い、大太夫や小太夫が順々に参加して、3匹の動作は発展を続け、複雑な舞になっていきます。最後はテンポを上げて3匹が御幣のまわりを勢いよく回り、大太夫が1拝して、チラシが終わります。

    この芝に代表されるように、女獅子が先導役を務める芝は他に花懸り、三拍子、棹懸りがあります。これらの場合女獅子は母親役を、2匹の雄獅子はその子どもの役を担っていると考えられます。

(B) これのもんへ 来て見れば 畳いぢに 建てた門かな
(A) この宮は ひだのくみが 建てたげで くさびとつで 四方かためる
(A) むさしのに 月のるべき 山もなし 尾花れに ひけや横雲

謡と謡との間の節は、この芝独自のものです。岡崎の節を主題として、次の謡を導き出します。